産院で赤ちゃんに飲ませるK2シロップとは?
こんにちは。conです。
私は以前産婦人科で働いていたのですが、産まれたばかりの赤ちゃんに経口(飲んで)投与されるK2(ケイツー)シロップの目的ってご存知ですか?
母子手帳にも、3回飲んだことを書いているかと思います。
(大体生後24時間以内、退院時、1か月健診時って感じでしょうか。)
今回はそのK2シロップについてお話ししたいと思います。
K2シロップとは
K2シロップとは、ビタミンKのシロップです。甘くしてあるので、赤ちゃんでも上手に飲んでくれます。
しかし、なぜビタミンKの投与が必要なのでしょうか?
おっぱいは、その赤ちゃんに合った栄養を補給してくれる最高のごはんです。
例えば早産で生まれてしまった赤ちゃんならその子に合った母乳の成分だし、正期産で生まれた赤ちゃんもその後の成長に合わせて母乳の成分が変わります。
WHOでもできれば母乳での栄養を推進しています。
でも、母乳に唯一少ない成分があります。
それがビタミンKです。
ビタミンKは血液の凝固作用などにかかわります。
ドイツ語で「血液を固めること(koaglulation)」の頭文字が由来だそう。
ビタミンKを多く含む食品として、納豆、青汁、モロヘイヤ、クロレラ食品、パセリ、紫蘇 などがあります。
例えば心筋梗塞や狭心症を起こした人がワーファリン(血液をサラサラにする薬)を飲んでいる場合、納豆を食べることができないのは、このビタミンKのせいなんですね。
ビタミンKが不足することで起きるリスク
赤ちゃんにビタミンKが不足していると、血液が凝固しにくくなってしまいます。
ビタミンKの欠乏による出血を「新生児メレナ」といいます。
具体的な疾患としては
新生児消化管出血
頭蓋内出血
後発型新生児出血性疾患
など
これらが起きる原因として、先ほども書いたように
・母乳中のビタミン K 含量は少なく、個人差が大きい
・ビタミンKは胎盤を介して赤ちゃんに行きにくく、出生時の備蓄が少ない
・腸内細菌叢(腸内細菌の集まり)が形成されていない
・ビタミン K の吸収能が低い
などがあります。
K2シロップを飲ませなかったことで起こった事件
2009年8月、山口市在住の女性が助産師の指導のもと長女を自宅出産した。同年10月、長女は生後2ヶ月で硬膜下血腫が原因で死亡した。
硬膜下血腫が発生した原因は、ビタミンK欠乏症による出血(新生児メレナ)であると考えられている。母子を担当した助産師は「ホメオパシー医学協会」に所属しており、ビタミンKの「記憶」や「波動」、「オーラ」を持ち「ビタミンK」と同程度の効果を持つと同団体が主張していた砂糖(いわゆる「レメディ」)を、ビタミンKの代わりに新生児に舐めさせた。本物のビタミンKを投与していないことを担当医師に気づかれないよう、母子手帳には「ビタミンK投与」と偽って記載したことがわかっている。
出典:山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故 - Wikipedia
エビデンス(根拠)に基づいてケアをすべき医療職がこんなことをするなんて本当に信じられないですね。
この赤ちゃんはビタミンKを投与していればこんなことにならずに済んだのかもしれないと思うとひたすら心が痛みます…
でも普通の助産師はこんなことしないので!!安心していただければいいなと思います。
まとめ
いままで「言われたから飲ませてた」という人もいるのではないでしょうか?
病院のスタッフもなかなかここまで説明する人はいないかもしれませんが、この記事を読んで、K2シロップの重要性と意義を理解していただけたらなと思います。
以上、「産院で赤ちゃんに飲ませるK2シロップとは?」でした。
では!